母と妹と私の共有地28坪を、昭和35年から、4階建ビル所有のため、T
会社に貸しています。地代は月額155,000円です。
一方、昭和40年から私たち3人はT会社所有地37坪を借りて住宅を建て、
月35,000円の地代を支払っています。
ところが、固定資産税が年々上がり、私達がT会社へ貸している28坪の固
定資産税は月9万円にもなりました。私達はT会社へ地代を値上げしてくれ
るよう頼みましたが、今年に入り月額220,000円にする代わりに37坪
の土地の地代を月額70,000円にしたい旨提示がありました。妥当な地代
はいくらですか。
また、私達は37坪の土地上の家を3階建に建て替えたいと思ってい
ますが、30年たちもう借地権が切れています。再契約となるのでしょうか。
また、借地権設定料も支払わないといけないのでしょうか。借地権割合はど
のように決まるのでしょうか。
<回答>
高度経済成長に伴って、全般的な物価上昇が生じ、とくに地価は、いわゆる
「バブル経済」といわれるような経済の急膨張に追随して、急上昇を示した
時期がありました。とりわけ、東京圏、大阪圏、名古屋圏は著しく、昭和3
5年からでは30〜40倍となったとされています。
このため、固定資産税も調整は加えられているものの、年々増加していると
いうのが実情です。
しかし、地代や家賃等は、長い間の人間関係によって、なかなか地価等の上
昇に応じて値上げできないのが実態です。
貴殿の場合も、地価上昇率に比べれば、地代の値上げ率は極めて少ないもの
となっているはずです。
ところで、「妥当な地代はいくらですか」との御質問ですが、土地所有者は
地代の中から固定資産税等の諸経費を支払って、残りがマイナスや0というこ
とでは、もちろん経営が成り立ちません。また借手側は、その土地をもって
自身の住居に使用している場合や、生業を営んでいる場合等は、その生計が
成り立つことが必要です。
その前提において、当初の地代が決められていたはずです。
しかし、長い年月を経ると、貸手も借手も、それをとりまく環境もすべてが
変化していき、バランスがくずれていきます。この場合、一般的にこれが妥
当であるという地代を算出する決定的な公式はありません。
貸手と借手がどの水準でお互い妥協できるかがポイントです。お互いの話で
決着しない場合には、裁判所等のお世話になることになりますが、裁判所の
判断の基本も同じく、貸手と借手の当初からの経緯を見ながら、法に照らし
て、できるだけ公平な線をもって決着をはかるように勧めます。この場合に
鑑定等をとることもありますが、鑑定の手法も決定的手法はなく、客観的な
要素である地価の変動、諸物価の変動、租税公課の変動、近隣の地代等を
比較検討し、貸主、借主との賃貸借の経緯等の主観的要素も考慮しながら判
断していくことになります。したがって、個々の契約内容によって様々な水
準となるのが当然です。これは、賃貸借という信頼関係を解消するのではな
く、「将来も仲良くやっていきましょう」という前提となる地代ですから、
「周囲の地代の例がどうだから、いくらでなければならない」というもので
はなく、お互いの生活が成り立つ中庸で妥協すべきです。
貴殿の場合も、親族関係にあられるようですし、当初の賃貸借のいきさつ、
お互いの生活、経営状況等を思いやって妥協される線を見つけてください。
次に、借地期間ですが、木造建物所有等は30年と借地法で定められていま
す。この期間が満了しても、建物が残っている場合は、借主はさらに20年
以上の期間、同一条件で更新してほしいと請求できますし、貸主は「どうし
ても自分でつかわなければいけない」等の正当事由があって異議を述べなけ
れば当然に更新されます。
この場合、借地権設定料等が必要かどうかですが、借地権設定料と言われる
のは、「権利金」とか「更新料」とか呼ばれるものと思われます。
法律上当然に「更新料」、「権利金」の支払い義務は生じません。ただし、
「更新料」等の支払いが契約上明確であり、その支払いを前提にお互いの信
頼関係が成り立っている場合には、支払わなければなりません。
貴殿の場合、契約当初にもそのようなものは支払っていないし、受領もして
いない状況にあるようですし、契約書にも更新料等が明確に記載されていな
い場合でしょうから、当然に支払うべきものとは言えないと思われます。
ただし、「3階建に建て替えたい」ということですが、鉄筋コンクリートや
鉄骨造となるケースが多いと思われます。このような場合には、当初の建物
が木造であるならば、今後は借地法でいう「堅固の建物」の所有目的となり
ますので、借地条件を変更しなければなりません。つまり建物の耐用年数が
長くなるので、貸主の承諾が必要です。そのためには、地代の値上げに応じ
るか、「更新料」又は「礼金」等の貸主へのお礼をするのが通常でしょう。
この場合は、貸主の承諾があれば更新期間は30年以上となります。
次に、借地権割合についてですが、借地権割合というものは、一般には表面
化しません。ところが、公共用地の買収や補償、借地権の譲渡等の場合に表
れてきます。これがいったい何かとなると、いろいろ問題が多いところです。
端的に言えば「取り分」です。これは、経済的な「力関係」、法律的な「力
関係」に基づいて決まってくるものと思います。
経済的には、借手が「権利金」等一時金をいくら払っているから「このくら
いは欲しい」とか、第三者が借地権を有償で買い取ることにより決まってく
ることがあります。
また、借主は、借地契約当初は「借していただいている」との気持ちが強く、
権利意識は低いのが通常でしょう。
ところが、長い年月にわたりその土地を占有してくると次第に「借りてやっ
ている」との気持ちが強くなってくると思われます。さらに、地代の値上げ
も低いため、新たに借地する場合の地代に較べて、ずっと低い地代で使用で
きます。つまり、借り得分が生ずるわけです。このように、借地法による借
地権の保護と、人間的信頼関係の希薄化、借り得の継続による借地人の利得
が一体となり、借地権価格ないしは借地権割合が発生すると考えられていま
す。
公共補償の場合や、相続税評価等の場合には、個別に評価するには大量の事
案のために難しく、取引慣行等に基づき、借地権と底地の価格割合を一律に
決めている場合が多いのです。
取引慣行といっても、明確なものがあるわけではなく、それぞれの契約内容、
力関係等により様々ですから、統計的に多いものを採用することとなろうと
思います。
したがって、一般的借地権割合と言われるものは一応の目安にすぎないとい
うことです。